聖アポロニア |
長崎県歯科医師会所蔵 |
歯の守護神として聖アポロニアはヨーロッパ各地で崇拝されています。 古代文化の中心地として繁栄したエジプトのアレキサンドリアはローマ皇帝の支配下にありましたが、当時の不安定な世情の中でパウロによってもたらされたキリストの教えは一般庶民の中に深く浸透することとなりました。人類愛を説くキリスト教は支配者にとって甚だ都合の悪い教えであり、キリスト教徒に対する弾圧が始まったのです。 西暦249年、アレキサンドリアの美しい女司祭アポロニアは予言者の煽動によって受難した。あいつぐ天変地異、悪疫流行はキリスト信仰に対するエジプトの神々の怒りであるとしました。煽動された暴徒達は彼女を捕らえ、顎骨を打ち砕き、歯を抜いて火あぶりにしました。彼女は短い祈りの後、紅焔に包まれて行きました。アポロニアの左手にある抜歯鉗子は最初から手に持っていたのではなく、13世紀以降になってから加えられといいます。アレキサンドリアからイタリア、フランス、スペイン、ベルギー、オランダ、ドイツなどで崇拝されている聖アポロニアの伝説と肖像は、ヨーロッパにおける医学教育の中心の変遷に重なり合っており興味深いものです。 |